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29th August 2025
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SSBJ基準とは──企業が今すぐ着手すべき対応

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Just released: The Global Supply Chain Sustainability Risk & Performance Index

Insight From EcoVadis Ratings

2025年3月、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、日本初のサステナビリティ開示基準を公表しました。これにより、企業は有価証券報告書においてサステナビリティ関連情報を開示することが求められるようになり、2027年3月期からは時価総額に応じて段階的に義務化される予定です。

本記事では、EcoVadisが2025年4月に実施したオンラインセミナーの内容をもとに、SSBJ基準の全体像と、企業が押さえるべき実務対応の要点を整理します。

SSBJ基準成立の背景と国際的な位置づけ

近年、世界的にESGに関する規制が強化されています。欧州ではCSRD(企業サステナビリティ報告指令)CSDDD(企業サステナビリティデューデリジェンス指令)が整備され、米国ではカリフォルニア州が気候関連開示規則を導入するなど、各地で制度化が進行しています。

一方、2025年2月に欧州委員会が発表した「オムニバスパッケージ」では、CSRDやCSDDDの適用基準に対する大幅な見直し案が提示されました。一部の企業にとっては対応負担が緩和される可能性もありますが、改正案は審議中で確定していません。規制強化の流れに変わりはなく、企業には継続的な対応が求められています。

このように、国際的な開示基準の動きが加速する中、日本でも情報開示の国際整合性を高める必要性が増しています。そうした背景のもとで策定されたのが、SSBJ基準です。

SSBJ基準は、従来企業ごとにばらつきのあった開示方法を統一し、企業間比較の容易化を図るものです。特に、機関投資家にとっては、投資判断の前提となる情報の信頼性が向上することが期待されます。

さらに、SSBJ基準では、ISSB(国際サステナビリティ基準委員会)の開示項目を原則すべて取り入れており、日本企業の開示水準が国際的な基準と整合する設計になっています。これにより、グローバルな資本市場においても、日本企業の開示が信頼に足るものとして認識される環境が整いつつあります。

SSBJ基準の構成:ユニバーサル基準とテーマ別基準

SSBJ基準はISSB基準の要件を取り入れ、次の2つの要素から構成されています。1つはサステナビリティ開示の基本ルールとなる「ユニバーサル基準」、もう1つはテーマごとの具体的な開示内容を定めた「テーマ別基準」です。

ユニバーサル基準では、マテリアリティや報告範囲、情報の相互関係などが示され、すべての開示に共通する枠組みとなっています。

一方のテーマ別基準は、「一般開示」と「気候関連開示」の2つに分かれています。前者は気候変動以外のテーマに、後者は気候に関する情報の開示に対応するものです。これらの基準には、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の枠組みに沿った「コア・コンテンツ」と呼ばれる4つの柱が共通して含まれます。

 

【コア・コンテンツの内容】

  1. ガバナンス

サステナビリティ関連のリスクと機会の監督体制、経営陣の役割・関与に関する情報を開示する。

  1. 戦略

リスクと機会がビジネスモデル、バリューチェーン、財務、意思決定に与える影響を開示する。気候関連ではシナリオ分析に基づく気候レジリエンスの評価も求められる。

  1. リスク管理

リスクと機会の特定、評価、優先順位付け、モニタリングのプロセスと、それらが全社的なリスク管理とどう統合されているかを明示する。

  1. 指標および目標

SSBJ 基準やSASBスタンダード、企業独自の基準に基づき、リスクや機会への対応状況を示す指標・目標を開示する(例:スコープ1〜3排出量など)。

現在、ISSBでは、生物多様性や人的資本などの新たなテーマの検討も進んでおり、将来的にSSBJ基準も拡充される見通しです。

SSBJが重視する3つの「つながり」

SSBJ基準では「つながりのある情報」の開示が重視されています。これはサステナビリティ情報が孤立した要素ではなく、相互に関連し合い、最終的に企業財務にも影響を及ぼすという前提に基づいたものです。

特に以下の3点に関して一貫性のある説明が求められます。

 

  • 開示項目間のつながり:コア・コンテンツ(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標および目標)の相互関係

  • サステナビリティテーマ間のつながり:たとえば、環境対応による雇用への悪影響などのトレードオフの関係

  • 財務諸表や有価証券報告書の他の情報とのつながり:環境対応による設備投資や収益変動への影響など

こうした「つながり」を明確にすることで、投資家は財務と非財務を統合的に理解し、より的確な投資判断が可能になります。

SSBJの適用スケジュールと義務化対象

SSBJ基準は、東証プライム上場企業の時価総額に応じて段階的に導入される見込みです。現在検討中のスケジュール案は以下のとおりです。

 

  • 時価総額3兆円以上の企業:2027年3月期から開示義務、翌年から保証義務

  • 時価総額1兆円以上の企業:2028年3月期から開示義務、翌年から保証義務

  • 時価総額5千億円以上の企業:2029年3月期から開示義務、翌年から保証義務

  • 東証プライム市場上場の全企業:2030年代に適用予定

  • スタンダードおよびグロース市場の企業:現時点では義務化予定なし

 

SSBJ基準では、有価証券報告書と同時にサステナビリティ情報を開示する必要があります。従来は有価証券報告書の発行後に別途サステナビリティ情報を開示する形式が一般的でしたが、今後は財務情報と同時の開示が求められます。

また、初年度に限り「二段階開示」が認められる見込みですが、2年目以降は一括での開示が原則です。さらに、外部専門家による保証(初期段階では限定的保証)が義務付けられ、将来的には合理的保証への移行も検討されています。これにより、定性的情報も含む全体的な開示精度の向上と、企業の情報管理体制の強化が期待されます。

今から取り組むべき準備とその意義

SSBJ基準に基づく開示義務は今後数年にわたって段階的に導入される予定ですが、その準備には時間とリソースがかかるため、早期の対応が求められます。特に時価総額の大きい企業にとっては、将来的な義務化を見据えた情報収集体制やデータ基盤の整備が不可欠です。

 

準備が遅れると、初年度の開示義務に間に合わないおそれもあり、リスク管理の観点からも計画的な取り組みが重要となります。

 

また、SSBJへの対応は、単なるコンプライアンスにとどまりません。開示の透明性向上は、企業評価や競争力強化にもつながります。ステークホルダーとの信頼関係を築くうえでも、戦略的に取り組む意義が大きいといえるでしょう。

 

EcoVadisでは、サステナブルなバリューチェーンの構築に向けた支援ソリューションを提供しています。バリューチェーン上のリスクと機会の特定、情報の収集、モニタリングの効率化を図ることで、SSBJ基準で求められる情報開示の対応がよりスムーズになります。詳しくはサポートチームまでお問い合わせください。

 

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